【通常の米、小麦等穀類と「まんぷくすらり」のRS含量】
通常の米、小麦などのRS含量は、0~1%です。いわゆる高RS穀類は、これらよりもずっと高い値を示す穀類のことを言います。
「まんぷくすらり」は、炊飯米で5~8%、米粉で4~5%です。
これまでに市販(あるいは予定)されている高RS穀類と「まんぷくすらり」を比べると、炊飯米のRSはこれらと同等あるいは高い傾向がありますが、米粉(生)は、低めです。
【難消化性澱粉の機能性について-1:カロリー】
RSは、消化酵素で分解されにくい澱粉のことですので、通常の澱粉より小腸で吸収されるブドウ糖が少ないため、カロリーオフが期待できます。実際にカロリー計算する際は、通常の澱粉が4 kcal/gであるのに対し、食物繊維やRSは2 kcal/gで計算されます。
【難消化性澱粉の機能性について-2:血糖値上昇抑制】
RSの機能性を示すために、実際には、単回摂取試験を行い、摂取した後の血糖値が、同じ量を摂取した対照食と比べて上がりにくいことを確認します。
「まんぷくすらり」は、この品種の元の変異体*を使ったパック米飯と米菓で、単回摂取試験を行っています。対照食の日本晴と比べて、食後の血糖値およびインスリンの分泌量が有意に少ないという結果が得られ、このことは既に論文発表しています。
*元変異体と「まんぷくすらり」は、ほぼ同じ澱粉構造を持つので、機能性も同等と考えられます。
【難消化性澱粉の機能性について-3:腸内環境の改善】
RSは、血糖値上昇抑制という機能性以外に、腸内環境の改善が期待できます。
RSを豊富に含む大麦*、小麦**、米***で動物実験(ラット)を行ったところ、短鎖脂肪酸(大腸にいる善玉腸内細菌が、RSを分解して分泌する物質)が増え、便の量も増加していた、という研究が論文として発表されています。
短鎖脂肪酸が大腸内で増えると、大腸環境が改善し、大腸がん等を予防します。つまり、食物繊維を摂取した場合と類似した効果があります。
*Bird et al., (2003) Journal of Nutrition 134: 831-835
**Regina et al., (2006) PNAS 103: 3546-3551
***Zhu et al., (2012) Plant Biotechnology Journal 10: 353-362
【難消化性澱粉の機能性について-4:機能性表示食品とトクホ】
以上のように、RSの摂取は、血糖値上昇抑制と腸内環境の改善が期待されます。残念ながら、RSは「機能性表示食品」の項目には登録されておらず、申請は困難かと思われましたが2020年9月にトウモロコシ由来湿熱処理レジスタントスターチが初めて承認されました。今後はレジスタントスターチが機能性表示食品として販売される日がくるかもしれません。また、「血糖値上昇抑制作用がある」や「腸内環境を改善する」などの表示したい場合は、現時点ではトクホ(特定保健用食品)を目指すという手もあります。
【その他の「まんぷくすらり」の特徴】
国内で実用化されている高RS米品種(We米、ちくし粉85号)の中では、種子重が最も大きく、収量が高いです。また、倒伏しにくく、開花が早い特徴があります。
炊飯米のRS含量が高く、米粉は低い傾向にありますが、米粉をゲル化させるとRS含量は復活します。
栽培地は、登熟時期に異常高温に当たるとRS値が低下する傾向があります。また、あまりに寒冷であると、完熟まで行きづらい傾向があります。従って栽培地としては秋田県がベストです。
【「まんぷくすらり」の農業形質】
・種子が大きい(「あきたこまち」の104%)
・収量は516 kg/10アール(「あきたこまち」の89%)
・中生、倒伏しにくい、熟期が長い
・粗タンパク質量が少ない